伏水紀行

 

作 ひろべえ

 

今日も東の端の桃山御陵の森の背から私は昇る

疎水べりに咲く桜の花びらが春の訪れを告げた

青く輝く高瀬川の流れに沿って菜の花はどこまで咲いているのだろう

今日もあなたは自分では輝けない

いつもあなたは私の光の影にそっと隠れてる

あなたは私 私はあなた

太陽があるから月も輝き

月があるから太陽も輝く

 

ああ 南はるか行けば

大きな港の姿が今もそこにあるかのよう

その港の先の川は、いつか広い大海へと続いてゆく

ああ 私は見てきたの

赤く広がる大きな砂漠、大きな崖、大きな大地

この川を流れている水も、いつかそんな風景を

見てきたのかもしれない

私の想いはまるで一夏の恋のよう

今日もあなたは気づかない

いつもあなたは目の前の物しか見えないの

いつか気づいてほしい 私の姿に

あなたは私 私はあなた

太陽があるから月も輝き

月があるから太陽も輝く

 

ああ 西にそびえる山々よ

もうすぐ私はあの人に会えるかもしれない

もう少しだけ私を引き止めてほしい

でも山々は私の願いを聞いてくれない

紅葉が秋の香りを運ぶ桃山御陵の森が

消えゆく私の光で赤く燃え上がる白い城壁よ

私はそこにあこがれを記していくわ

いつかあの人に伝えてほしい

あなたは私 私はあなた

太陽があるから月も輝き

月があるから太陽も輝く

 

今日も北の空に北極星が輝く

僕は気まぐれにいつも光っていた

北極星の光が照らした冬の夜露の光が

桃山城の城壁に残された想いを僕に伝えてくれた

黒い夜空が明るく輝いた

あなたは僕 僕はあなた

太陽があるから月も輝き

月があるから太陽も輝く

それはどれだけ暦を読んでも変わる事のない魔法

 

あなたは僕 僕はあなた

太陽があるから月も輝き

月があるから太陽も輝く

愛は寂しさから生まれない

僕が愛するからあなたも光る

あなたに愛があるから僕も光る

 

伏して見出したりし國なれば 伏見とはこの秋津島の名なるべし

太陽の愛と月の愛

交わり合いて 全ての明日が輝く國

だから私は 今日もあなたを待ってます

いつかあなたとまた会える日を

 

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